突然ですが、新規事業や起業が失敗する要因は何だと思いますか?資金不足や組織戦略のミスなど考えられる要因は様々ありますが、そもそもその商品・サービスにニーズがない為に失敗するケースが非常に多いです。
多大な時間や費用を費やしたものの、ニーズがない事を理由に収益を得られなければ、回復できないほどの大損を被ってしまいます。
そこで今回は、新規事業のリスクを軽減する手法「顧客開発モデル」について、分かりやすく要点をまとめて解説します。
目次
顧客開発モデルとは
顧客開発モデルとは、「開発したものが売れない」というリスクを低減する為の経営方法論です。アメリカの起業家”Steve Blank”氏が自身の経験を基に開発した「顧客開発モデル」は、スタートアップの経営方法として脚光を浴びています。
顧客開発モデルでは、本格的に開発する前に顧客からの意見を得て、実際に顧客の存在を確かめた上で、事業を展開していきます。
顧客開発モデルのプロセス
顧客開発モデルでは、以下4つのプロセスにより、新規事業を展開していきます。
顧客の発見(どのようなニーズがあるのかを確認)
まず初めに、現在持っている仮説が正しいか(開発予定の製品・サービスにニーズがあるかどうか)を確認します。
このプロセスでは、実際に顧客との対話や観察を行い、ターゲットとなる顧客の性質や、自社の製品・サービスが顧客にどのような価値をもたらすのかについてインタビューなどを通じて確認していきます。
この段階ではまだ製品自体は必要なく、顧客候補へのインタビューを通じて、仮説検証を行っていきます。
インタビューの段階で、ニーズがないという事であれば、製品開発よりも、そもそもの仮説自体を見直しを行う必要があるでしょう。
またインタビューを通じて、顧客候補と対話する中で新しい発見があるかもしれません。
顧客発見のプロセスを通じて、顧客が抱える潜在的なニーズを確認、把握をし仮説の検証、調整を行っていきます。
顧客の実証(製品・サービスが売れるかどうかを確認)
顧客の抱える潜在的なニーズが把握できたら、自社の製品・サービスを顧客に販売するプロセスに入ります。
ただし完成度の高い製品・サービスを製作しようと思ったら、莫大な投資や膨大な時間が必要となるケースが多いです。そこで顧客開発モデルでは、顧客のニーズを満たす最低限の製品(MVP)を用いて検証するのが一般的です。
最低限の機能を備えたMVPを用いることで、費用や時間を大幅に抑えることができるため、リスクの低減に繋がります。
実証の結果十分に売れた場合は、次のプロセスに進みます。一方で売れ行きが芳しくない場合は、顧客からのフィードバックを踏まえてMVPの改良を実施します。
根本的に顧客のニーズを間違って認識していた場合は、顧客発見のプロセスに戻る場合もあります。
顧客の開拓(顧客に商品を届ける方法を模索)
前のプロセスで、自社の製品・サービスに需要があることは明らかになれば、次は顧客開拓です。
どれほど優れた商品であっても、顧客に知ってもらえなければ売上を上げる事は出来ません。
そこでこのプロセスでは、顧客に商品を届ける方法を模索します。具体的には、プロモーションや販売促進などのマーケティング施策を考えていきます。
このプロセスでは、顧客ごとに合ったマーケティング施策を見つけ出せるかが重要になります。
組織の構築(本格的な事業展開のために組織を構築)
会社として十分な収益を得続けるためには、利益を生み出す組織作りが必要です。
顧客開発モデルでは、組織構築についても4つのプロセスに分けて説明しています。詳しくは割愛しますが、最終的には迅速に行動できる組織作りが理想とされています。
以上で、顧客開発モデルのプロセスは完了になります。
顧客開発モデルを取り入れるメリット
顧客開発モデルを新規事業に取り入れると、以下のメリットを期待できます。
失敗した際のダメージを最小限に抑えられる
顧客開発モデルでは、確実に顧客のニーズがあることを確認してから、本格的にリソースを投入します。最初の方は時間や費用をあまりかけないため、失敗した際のダメージを最小限に抑えることができます。
この点は、不確実性の高い新規事業にとって非常に大きなメリットと言えます。
顧客が欲しいものを提供できる
顧客が欲しいものを提供できる点も、顧客開発モデルの大きなメリットです。
顧客のニーズを都度確認しながらプロセスを進めるため、せっかく開発したものが顧客に受け入れられないという事態を回避しやすいです。
新規事業の成功可能性が高くなる
顧客開発モデルを取り入れると、仮に失敗した際のダメージを最小限に抑えられるため、製品改良やピボットにより再チャレンジしやすいです。
再チャレンジの際には顧客からのフィードバックを参考にするため、以前よりも売れる製品を販売できる可能性が高くなります。
顧客開発モデルとリーンスタートアップとの関係
顧客開発モデルとしばしば紐づけられる用語に、「リーンスタートアップ」があります。それもそのはず、「リーンスタートアップ」の考え方は、提唱者が顧客開発モデルを実践した経験を基に完成させた方法論です。
顧客開発モデルを基にしているため、リーンスタートアップも仮説検証を軸に顧客のニーズを重視する方法です。
強いて違いを言うなれば、リーンスタートアップはアジャイル開発やトヨタ生産方式の考え方も取り入れています。ですので、リーンスタートアップはシステム開発を伴う新規事業に向いている方法論と言えます。
リーンスタートアップの詳細についてはこちら
顧客開発モデルの事例
顧客開発モデルを実際に活用した事例として、「NEC ビッグローブ株式会社」の事例をご紹介します。
この会社では、自分が使っているアプリを紹介し合う「Let’s App」をリリースしています。このアプリには、目の前にいる友人とアプリを紹介し合う機能と、ネット上で幅広く紹介する機能があり、後者の利用率が低いという課題を抱えていました。
そこでこの会社では、顧客開発モデルを取り入れて、利用率の改善に取り組みました。その結果、当初5%程度であった利用率が、35%まで上昇したようです。
ただし上記はあくまで一部の成功例であり、上手くいかなかったサービスの改善・リリースもあるそうです。
短期間で顧客開発モデルのプロセスを回すことで、試行錯誤しながらニーズを満たすプロダクトの開発に取り組んでいるのでしょう。
この事例をさらに詳しく知りたい方は、下記のスライドをご参照ください。
まとめ
今回は、顧客開発モデルのメリットやプロセス、リーンスタートアップとの関係についてご説明しました。
失敗した時の損失が大きいと思われがちな新規事業ですが、顧客開発モデルを取り入れる事で努力が水の泡となるリスクを最小限に抑えられます。
今後新規事業を立ち上げたい方は、顧客開発モデルを取り入れてみてはいかがでしょうか?
私たちの会社では、新規事業に特化してアジャイル開発を採用した開発サポートを行っています。顧客開発モデルの実行にもお役に立てると思うので、ぜひ気軽にご相談ください!!