体感している方も多いかもしれませんが、近年ビジネスを取り巻く環境はますます厳しくなっています。高品質の製品・サービスを販売すれば良いという時代は終わりつつあり、昨今は消費者側の視点に立った事業展開が必要とされています。
とはいえ、消費者のニーズに立った事業展開といっても、具体的にどのようにすれば良いかお悩みの方もいるかもしれません。
そのような方にオススメなのが、「デザイン思考」です。デザイン思考を活用すれば、顧客側の視点に立って事業を展開しやすくなります。特に不確実性の高い新規事業においては、デザイン思考はとても役立つと私達は考えています。
この記事では、デザイン思考のメリットやプロセス、活用事例、勉強に役立つ本などをご紹介します。
新規事業の立ち上げを検討中の方には必見の内容です。
デザイン思考とは
デザイン思考と聞くと、多くの方は芸術的な素養やスキルを思い浮かべるかもしれません。確かにデザイン思考では、デザイナーの感性や手法を取り入れることも重視していますが、もう一点重視しているポイントがあります。
デザイン思考が重視するもう一つのポイントとは、「問題解決」です。顧客側の視点に立って問題解決を図らなくては、デザイン思考とは呼べないでしょう。
つまりデザイン思考とは、顧客の抱える問題を洗い出し、それを基にデザイナーの感性と手法を用いて、市場の創出やイノベーションを起こす思考方法です。
アメリカのコンサルティング会社「IDEO」が提唱したデザイン思考は、アップル社やサムソン、ノキアなどの世界的大企業に取り入れられています。
デザイン思考に必要なマインド
デザイン思考では、以下のマインドが必要と言われています。ご紹介するマインドを持った上で、デザイン思考を活用するのがベターでしょう。
ユーザーの視点に立つ
新規事業を成功させるためには、利益や自社の経営資源だけでなく、ユーザー視点に立ったサービス開発が圧倒的に重要です。
どれほど利益率の高いビジネスで自社の強みを活用できるとしても、当然ですが、ユーザーに必要とされないサービスであれば、収益を上げる事はできません。
一方でデザイン思考では、ユーザーの抱える悩みやニーズを前提に、それを解決するための価値を提供して初めて良いビジネスであると考えます。
素早く行動する
完成させたプロダクトが、必ずしもユーザーのニーズを満たしているとは限りません。
デザイン思考では、早いうちに試作品を作り、使用するユーザーのフィードバックを得ることを重要視しています。
「試作品制作→フィードバックを基に改善」というサイクルを繰り返すことで、最終的に素晴らしい製品・サービスを提供できるようになります。
失敗しても良いからとにかく素早く行動することが、デザイン思考にとって欠かせないマインドです。
これはリーンスタートアップのMVP開発とも近い考え方ですね。
MVP開発に関してはこちらの記事をご参照下さい。
多様な人たちとのコミュニケーションを重視
デザイン思考に欠かせないマインドの一つには、コミュニケーションの重視も含まれます。
異なる考え方を持つメンバー同士でコミュニケーションをとることで、一人では思いつかないアイデアを生み出せる可能性があります。
言葉ではなく見せる形で訴求
新規事業の事業モデルなどを誰かに伝える際、どのようにして伝えますか?
デザイン思考では、言葉ではなく実際の製品などを「見せる」形で伝える方法が良いとしています。
視覚的に訴求することで、相手にサービスや製品の魅力を最大限伝えられるかもしれません。
デザイン思考が新規事業にもたらすメリット
デザイン思考を新規事業に取り入れると、主に以下のメリットを期待できます。
成功確度の高いアイデアを生み出せる
デザイン思考の最も大きなメリットは、事業成功率の高いアイデアを生み出せる事だと考えています。
デザイン思考では、消費者の抱えるニーズを基軸に置くため、起案者の思い込みでないユーザのニーズや課題を解決する本質的なアイディアを生み出しやすくなります。
また、事業化する前にアイディアの検証を行う事で、確度の低いアイディアを途中でふるいにかける事が可能です。
新規事業でありがちな、誰も必要としていないサービスをコストと時間をかけてつくってしまったという失敗を避ける為に、デザイン思考を取り入れる事は非常に有効だと考えています。
一体感の醸成
これは副次的な効果ですが、デザイン思考を取り入れると、プロジェクトメンバーの間で頻繁にコミュニケーションを取るようになります。頻繁にコミュニケーションを行うことで、新規事業に対して認識が共通化される上に、信頼感なども醸成されます。
チームの一体感が醸成されれば、イノベーションの発生や生産性の向上なども期待できます。
デザイン思考のプロセス
デザイン思考に基づくと、以下5つのプロセスで新規事業を展開します。
ユーザを徹底的に観察
デザイン思考では、新規事業のターゲット層を観察するプロセスから始めます。ターゲット層を観察し、ターゲットとなるユーザーが抱える課題や欲求などのニーズを可能な限り多く洗い出します。自分自身が対象ユーザでない場合は、徹底的にユーザインタビューを行い、自身がユーザになりきれる程、ユーザを理解しましょう。
このプロセスでは、ユーザー側の視点に立つというマインドを常に持っておくことが大切になります。
解決すべき問題の定義
ユーザーの観察によって得た課題や欲求の中から、真の課題を絞り込む(定義する)プロセスになります。
ありきたりな例ですが、「高性能のドリルが欲しい」という欲求の背景には、「穴を開けたい」という真のニーズが隠れています。
このプロセスでは、表面的な課題ではなく真のニーズを特定することが重要となります。
可能な限り多くのアイデアを出す
次に、問題定義のプロセスで特定した本質的な課題の解決方法を考えます。
このプロセスでは、ある一つの解決方法をじっくり考えるのではなく、思いつく限り多くのアイデアを量産する事が大切です。
プロトタイピング
プロトタイピングとは、量産したアイデアの中から、ユーザーに特に好まれそうなアイデアを形にするプロセスです。
このプロセスでは、時間とコストをかけて完成品を製作するのではなく、可能な限り短時間かつ低コストでプロトタイプ(試作品)を製作することが重要です。
プロトタイピングを実施する事で、視覚化しなければ気づけない新たなアイデアを発見できる可能性があります。
検証(ユーザフィードバック)
検証のプロセスでは、作成したプロトタイプをターゲットユーザ(第三者)に使用してもらい、フィードバックを得ます。
外部の第三者に使用してもらう事で、ユーザーの課題解決に繋がっているかを確認できます。またフィードバックを基に、新規事業のさらなるブラッシュアップにも繋げられます。
以上で、デザイン思考のプロセスは完了となります。
デザイン思考の活用事例
ここでは、デザイン思考を実際のビジネスに活かした事例を3つご紹介します。
デザイン思考を活用し、収入を大幅増加させた事例
新規事業にデザイン思考を取り入れるケースをご紹介してきましたが、自営業の方がデザイン思考を取り入れて収入を激増させた事例もあります
この方は、自分の持つスキルを活かして最低限の収入を得ながら、徐々にデザイン思考に基づいて新規事業を次々展開していきました。
多くの新規事業を失敗させているものの、それぞれの失敗による損失が最小限に抑えられているため、何度も新規事業にチャレンジできています。何度も挑戦を繰り返すうちに成功事例が蓄積され、8ヶ月で月収0円から150万円まで増加させています。
収入を増やしたいと考えている個人事業主の方にとっては、非常にお手本となる事例です。
メルカリによるデザイン思考の活用事例
サービスを急成長させてきたメルカリも、デザイン思考を実践しています。
前述したプロセスによりデザイン思考を展開するケースが一般的ですが、メルカリでは独自のフレームワークを用いてデザイン思考を実践しています。
具体的には、「顧客への理解・共感」、「チームでの情報共有」、「デザインスプリントの活用による素早い検証」という、計三つの手法を用いてデザイン思考を実践しています。
顧客を細分化する点や早めに失敗する事を重視する点などが、メルカリのオリジナリティとして考えられます。
新しいトイレットペーパーの開発事例
この事例では、一見差別化しにくいトイレットペーパーの新製品を、デザイン思考によって開発するプロセスが説明されています。
フックがついている製品や持ち手が三段階に変化する製品などがプロトタイプとして製作され、最終的には肩がけできるトイレットペーパーが完成しました。
差別化しにくい市場で新規事業を展開したい方には、参考となる事例となるでしょう。
デザイン思考の勉強にオススメの本
最後に、デザイン思考の勉強にオススメの本を2冊ご紹介します。
デザイン思考が世界を変える
こちらの本は、デザイン思考を提唱した「IDEO」のCEOが執筆しています。
デザイン思考を最前線で実践している方が、デザイン思考により社会問題を解決する秘訣を、自身の経験談も交えつつ解説しています。
本格的にデザイン思考を学びたい方には、必須の本といっても過言ではありません。
デザイン思考の教科書 欧州トップスクールが教えるイノベーションの技術
この本では、世界トップクラスのイノベーター集団「デルフト工科大学」で実際に使用されている手法が紹介されています。
目的に応じたデザイン思考の各手法が、ビジュアルで分かりやすく解説されています。
最先端のデザイン思考を学びたい方にはオススメの一冊です。
最後に
今回はデザイン思考のメリットやプロセス、活用事例、オススメの本について解説しました。
素早い行動を重視するデザイン思考は、不確実性が高い新規事業に最適の考え方かもしれません。新規事業の立ち上げを検討中の方は、デザイン思考の考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか?
今回ご紹介した情報が、新規事業の展開に役立てば幸いです。
最後に私たちの会社についてご説明させてください。
弊社では、新規事業のアプリ・システム開発を承っています。新規事業でシステム開発が必要となった際は、ぜひ気軽にご相談ください!