プロダクトライフサイクルの短期化や経済のグローバル化などの影響により、一つの事業(商品)のみで市場で生き残るのは難しくなっています。
そこで近年は、新規事業や研究開発を積極的に行う重要性が増してきました。
新規事業や研究開発を行う上で、「オープンイノベーション」という手法が役立つと言われています。
今回の記事では、オープンイノベーションの意味やメリット、事例などをご紹介します。
目次
オープンイノベーションとは?オープンイノベーションの意味
オープンイノベーションとは、他の会社や大学などの研究機関・専門家からアイデアを募集し、イノベーションとなるサービスや商品を開発する手法です。
自社のみで研究開発を行うのではなく、外部の組織と連携した上でイノベーションを図る点が特徴であり、競争が激化している昨今はその有効性が注目を集めています。
近年は、テクノロジーに強みを持つスタートアップ企業と大企業がお互いのアセットを活かし事業を共創する様なオープンイノベーションの事例も増えてきています。
オープンイノベーションのメリット
オープンイノベーションには、主に以下3つのメリットがあると言われています。
自社にはない経営資源の獲得
最も大きなメリットは、自社にはない経営資源を獲得できる点です。
自力では獲得するのが困難なスキルや技術力を獲得できるため、これまでとは全く異なる事業のアイデアを実現しやすくなります。
例えば、個人消費者に圧倒的なリーチ力を誇るコンビニエンスストアの様な小売業の大企業と、機械学習などの人工知能(AI)の扱いに長けた技術者を抱える大学発スタートアップが、コラボレーションしたと仮定してみます。
小売業の大手企業は、消費者の莫大なビッグデータを持っていますが、高度な分析を実施するエンジニアチームを内製で持っていません。
一方、機械学習を強みとするスタートアップは、分析技術は持っていても、実用化に耐えうる量と質を備えたビッグデータをもっていません。
そこでオープンイノベーションにより、自前主義をやめ、双方のリソースを共有するのです。
お互いの領域は、畑違いではありますが、お互いのアセット(経営資源)を活かし合うことで大きなイノベーションが起こせる可能性が高まります。
シナジー効果や競争優位性の構築
オープンイノベーションを実施することで、互いの研究や事業が良い影響をもたらし合う(シナジーを生み出す)メリットも期待できます。
そうしたシナジー効果により、破壊的なイノベーションが実現したり、顧客に大きな価値を生み出す商品開発にもつながります。
またオープンイノベーションによって生み出した技術力などは、他社が容易に真似できない競争優位性にもなり得ます。
事業展開のスピード向上
オープンイノベーションにより外部からアイデアや技術を取り入れることで、自社のみで活動する場合と比べて、よりスピーディーに目標達成に向けて行動できるようになります。
また、一般的に大企業の方が、スタートアップの様な小規模組織と比較し、スピードが遅い傾向にあります。
このスピードの遅さがネックとなり、ヒト・モノ・カネの全てが上回っているはずの大企業がスタートアップに負けてしまうケースも散見されます。
そういった問題を解消する為、オープンイノベーショにより、外部人材をチーム内に入れたり、スタートアップ企業との合弁企業をつくり、スピード感を持って動ける組織やチームをつくる事も有効です。
スピーディーな事業展開は経営上大きなアドバンテージとなるので、こちらも魅力的なメリットと言えるでしょう。
オープンイノベーションの課題
オープンイノベーションにはメリットが多い一方で、無視できない課題もいくつかあります。
収益分配や費用負担についてトラブルとなるリスクがある
オープンイノベーションでは複数の組織が協力するので、必要となる費用や得られる収益は、契約等により分配する必要があります。
ここで課題となるのが、どのように収益や費用を分配するのかということです。
考案したアイデアや開発した技術などの要素は、どちらの組織がどの程度貢献しているかを判別しにくい事もありえるでしょう。
事前に納得できる費用負担や収益分配の割合を決めておく必要があります。
技術力やアイデアが社外に流出する可能性
オープンイノベーションを行う上で、注意したい課題は「技術力やアイデアの流出」です。
オープンイノベーションでは、外部の組織と協力しながら技術やアイデアを生み出すという側面があります。そのため、ある程度は自社の技術力やアイデアが外部の組織に知られてしまいます。
仮に外部組織が自社の強みである技術やアイデアを転用されたり、または外部に漏洩する可能性もないとは言い切れません。
この課題に対処するためには、情報開示の範囲について事前に定めておくことが有効です。あらかじめ開示しない情報を定めておけば、大きなリスクを避けられるでしょう。
また機密保持契約を結び、相手が知った自社の情報を外部に漏洩しないように契約でリスクヘッジする事も忘れずに行う必要があります。
オープンイノベーションの成功事例
オープンイノベーションのメリットや課題を深く知るためには、実際の事例を確認するのがオススメです。
まずこの項では、オープンイノベーションの成功事例からご紹介します。
成功事例1:日立グループ
まず初めにご紹介するのは、日本を代表する大企業「日立グループ」の成功事例です。
「日立グループ」は今後グローバルに事業を展開していく必要性があると考え、それに対処する目的でオープンイノベーションを積極的に推進しています。
国内外の有力大学とオープンイノベーションを図ることで、「超高速データベースエンジン」や「再生医療向け自動細胞培養装置」などを開発しています。
先進的な技術を次々と生み出している点で、素晴らしい成功事例と呼べるでしょう。
成功事例2:P&G
二つ目の成功事例としてご紹介するのは、洗剤などを販売する「P&G」の事例です。
P&Gでは、「コネクト・アンド・デベロップメント」というスローガンを掲げて、積極的にオープンイノベーションに取り組んでいます。
サプライヤーや研究機関など、幅広い対象から技術やアイデアを集めている点が、同社の取り組みにおける特徴です。
P&Gはオープンイノベーションにより、商品開発の時間短縮やコスト削減などの効果を得ています。
まさにお手本とも言える成功事例であり、P&Gさんの事例は実際にオープンイノベーションを行う際に役立つと思います。
オープンイノベーションの失敗事例
目的のないオープンイノベーションごっこは失敗しやすい
オープンイノベーションが流行っているからという理由で、特に明確な事業目的や、課題感がない中で、コラボレーション先を探すといった場合、ほとんどの場合で失敗してしまいます。
オープンイノベーションによる、他企業とのコラボレーションはあくまで手段であり、何かしら具体的な目的や課題が必須です。
ただ、「何か一緒に面白いことできませんかね?」といった姿勢の場合、お互いの時間を浪費するだけで、何も生み出せないケースがほとんどです。
当然の事ではありますが、具体的な事業目的や、課題感があった上で、協力者を探したほう良いでしょう。
最後に
今回は、オープンイノベーションのメリットや課題、成功・失敗事例についてご紹介しました。
変化の激しい現代社会において、他社と協力する「オープンイノベーション」はとてもメリットが大きい方法です。しかし一方で、多くの失敗事例や課題があるのも事実です。
オープンイノベーションを実施する際は、メリットだけでなく課題も踏まえた上で慎重に行動すべきではないかと思います。
最後に私たちの会社についてご説明させてください。私たちの会社では、新規事業を行う方を対象に、システム開発やアプリ開発を承っています。
システム開発やアプリ開発をご検討した際には、お気軽にご相談してもらえれば幸いです!